ひとえに香水といっても、著名なファッションブランドの香水からニッチなメゾン系ブランドなど、様々な種類があります。
そして香水の分類にも種類があり、それは香水中の香料の濃度を意味する賦香率(ふこうりつ)によって分けられます。
賦香率が高い順に「パルファム」「オードパルファム」「オードトワレ」「オーデコロン」「オーデサントゥール」と呼ばれます。
香料が多く含まれている香水ほど香り立ちも強いうえに持続時間も長くなり、お値段も高くなる傾向にあります。
またシーンごとに最適な香水も異なってくるため、これらの意味をおさえておくことで、香水を選ぶ際の参考になると思います。
ただどれも似たような言葉であり、一度聞いただけでは覚えられないかもしれません。
しかし言葉の意味を合わせて知ることで、一段と覚えやすくなります。
香水の種類:分類の由来はフランス語
フランス・パリには世界に名を轟かせる有名ブランドが多数軒を連ねており、南フランスの町・グラースで収穫されるジャスミンのほとんどは、シャネルのアイコニックな香水のひとつ「シャネル N°5」専用の原料とされているほど理想的な素材とされています。香水の本場といえばフランスです。
そして香水の種類の分類名は、そんな香水の本場フランス語に由来しています。
香水の種類 | 日本語への直訳 | 補足 |
Parfum(パルファム) | 香水 | Pとも表記される。 |
Eau de parfum(オードパルファム) | 香水の水 | EDPとも表記される。 |
Eau de toilette(オードトワレ) | 化粧用の水 | EDTとも表記される。 |
Eau de cologne(オーデコロン) | ケルンの水 | コロンは英語読み。フランス語ではコローニュ。ドイツの都市ケルンを意味する。EDCとも表記。 |
Eau de senteur(オーデサントゥール) | 香りの水 | EDSとも表記される。 |
日本の市場に出回っている香水のほとんどが、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンです。
しかし厳密な意味での香水は、パルファム(Parfume)を指します。
他の名称にはオー(Eau)という言葉が付いていますが、これは「水」という意味のフランス語です。
香水は基本的に香料をアルコールで希釈して創作しますが、この言葉の意味から、パルファムよりもオードパルファムのほうがより薄い香水であることが予想できるかと思います。
商品開発においても、パルファムを再解釈してオードパルファムを、さらにオードパルファムからオードトワレを創作することが多く、香水の世界観のベースとなるのは香料が多く含まれる上位のフレグランスだといえます。
パルファム:一滴だけで十分に香る
最も賦香率が高く、香りの持続性も高い香水がパルファムです。
香料の使用率が高いため、5つの分類の中で最も価格が高くなりますが、一滴で十分強く香るため、お気に入りの香りであれば長く楽しめるアイテムといえます。
また香水好きの方の中にはご自身でアルコールで希釈して使用する方もおり、香水の世界観をしっかり味わいたい方、またシーン別に薄めて使い分けたい方にはオススメです。
ライトな香りが好まれる日本の市場ではあまり見られませんが、いわゆる名香といわれる香水やクラシックな香りにはパルファムが多いため、時代の香りに関心のある方にはぜひ挑戦してほしいと思います。
▼代表的な名香
シャリマー(ゲラン)、夜間飛行(ゲラン)、ミツコ(ゲラン)、ジョイ(ジャンパトゥー)、ランテルディ(ジバンシー)、No.5(シャネル)
オードパルファム:パーティーなど華やかなシーンにオススメ
現在の市場で最もよく広まり、香りの持続時間も長いのがオードパルファムです。
言葉を直訳すると「香水の水」となるように、最もParfumeに近い深みがあり、ブランドの世界観を感じられるものになっています。
香りがしっかりいて香りの移り変わりも感じやすいことも特徴です。
ご自身の纏いたいイメージを表現するのに最適で、パーティーなど晴れやかな場面で活用したいアイテムです。
オードトワレ:普段使いにおすすめ
優しい香りが好まれる日本では、オードパルファム以上に利用されるシーンが多いのがオードトワレです。
直訳で「化粧用の水」と称されるように、普段のファッションの一部として利用されることを想定した香水で、お出かけのタイミングだけではなく、職場で使っている方も多いです。
比較的低コストのためカジュアルに利用することができ、初めて香水を買う方にもオススメです。
もちろん商品によってはオードパルファムのように香りが強いものもあり、苦手な香りの主張が強いケースも考えられるため、実際に店頭で試してから購入された方がいいでしょう。
オーデコロン:気分転換・リラックスしたいシーンにおすすめ
香り立ちが薄くライトで、シトラス系やサボン(石鹸)系の香りが多く発売されているのがオーデコロン。
直訳すると「ケルンの水」という意味になりますが、これはナポレオン時代の1709年にドイツのケルン(コローニュ)でヨハン・マリア・ファリナが発売したことに由来します。
持続時間は控えめですが、その分外出先で付け直しても嫌みがなく、香りが飛びやすい夏などにオススメです。
お風呂上りや就寝前に軽くワンプッシュすることでリラックスタイムを演出できますし、気持ちよく次の日を迎えるためのルーティンに取り入れてみるのも楽しいと思います。
オーデサントゥール:子供へのプレゼントにもおすすめ
日本でオーデサントゥールの名前を聞くことはあまりないかもしれませんが、フランスでは子供や赤ちゃんにプレゼントとして香水を送るほど一般的で、オーデサントゥールが購入されるケースも多いです。
香料が少なめなので香り立ちもほのかに優しく、デリケートな子供のお肌にも使えるようアルコールフリーの商品が多い傾向にあります。
スーパーへの買い出しなどほんの少しだけ外出する際に使用するのにもおすすめです。
香水のノート:香りの移り変わり
香水は付けてから香りが抜けるまで、ずっと同じ香りが続くわけではなく、時間とともに香りの移り変わりを楽しめるように構成されています。
それは香り初めから順番に、「トップノート」「ミドル(ハート)ノート」「ラストノート」の3つに分類されています。
トップノート
香水を付けてから5分~15分程度までの香りをトップノートと呼びます。
トップノートにはアルコールとともに揮発しやすい柑橘系やスパイス系の香りが使われることが多いです。
この傾向から、香り立ちが「さっぱり」「爽やか」「スパイシー」である香水が多いです。
もちろんトップノートから穏やかな香り立ちや甘い香り立ちの香水もあります。
香水を付けた瞬間から一目ぼれする方が多いティファニー・ローズゴールドなどはトップノートにカシス・ライチといったフルーツ系の香料を使用しており、香り立ちが甘いことも理由かもしれません。
▼トップノートに使われる代表的な香料
柑橘系:ベルガモット、レモン、マンダリン、グレープフルーツ
スパイス系:カルダモン、クローブ、クローブ、ピンクペッパー
ミドルノート(ハートノート)
香水をつけてから30分ほど経った後に香りをミドルノート、もしくはハートノートといいます。
香水のテーマや世界観が現れる部分で、核となる香料が使用されます。
香水のつけたてであるトップノートの香りは人によっては刺激が強いため、デートなどのお出かけ時はミドルノートが香るタイミングで外出するのがオススメです。
▼ミドルノートに使われる代表的な香料
ローズ、スズラン(ミュゲ)、ジャスミン、アイリス、スミレ
ラストノート(ベースノート)
香水をつけてから2時間ほど経過した後の香りをラストノート、もしくはベースノートといいます。
ウッディ系の香料やムスクなど穏やかでぬくもりのある甘い香りが採用され、つけた人それぞれの肌となじみ、その人独自の香りへと変化していきます。
トップノートの香りで一目惚れして購入した方で、ラストノートの香りが好みでなかったというケースもあります。
香水の購入を検討される場合は実際に肌につけてみて、ラストノートの香りまで確かめたうえで考えてみても遅くはないと思います。
▼ラストノートに使われる代表的な香料
サンダルウッド、ベチバー、パチョリ、ベンゾイン、アンバー、バニラ
香りの系統:纏いたい雰囲気によって使い分けよう
シトラス(柑橘)系:すっきり爽やかな香り
オレンジやベルガモットなど、柑橘系のさっぱりした香りの系統をシトラス系と分類します。
男女を問わず幅広い年代に好まれる香りの一つで、夏にぴったりの軽やかな香りです。
シトラス系の香りは揮発スピードも速いため、トップノートの香りとして10~15分ほどの香りの持続時間であることがほとんどです。
▼シトラス系の香水
アクア ユニヴェルサリス(メゾン・フランシス・クルジャン)
ハーバル系:ハーブを使用したリラックスできる香り
ラベンダーやレモングラス、ミント、ローズマリーなど、香草類を用いた香りをハーバル系と分類します。
香水以外にもハーブティに用いられているように、リラックス効果が高い香りとしても有名です。
オーガニック系のスキンケアアイテムの香りにも用いられているように、健康的な香りが広く好まれています。
植物園に行けばその香りを直接香ることもできるのでおすすめです。
▼ハーバル系の香水
ウッドセージ&シーソルト(ジョー・マローン・ロンドン)
フローラル系:華やかな女性らしい香り
ローズやジャスミンなど、いわゆるお花の香りの香料をメインに使用した香りの系統をフローラル系と分類します。
女性らしい華やかな印象を演出できる香りで、特に女性に人気のある系統です。
またフローラル系の香料の中でも、ローズ・ジャスミン・スズラン(ミュゲ)は3大花香と呼ばれるほど多くの香水に使用されています。
▼ローズ系の香水
ア・ラ・ローズ(メゾン・フランシス・クルジャン)、オーローズ(ディプティック)
▼ジャスミン系の香水
ガブリエル(シャネル)、ブルーム アクア ディ フィオーリ(グッチ)
▼スズラン系の香水
リリーオブザバレー(ペンハリガン)、ミュウミュウ・オードパルファム
ウッディ系:落ち着いた大人っぽい香り
サンダルウッドやシダーウッド、アガーウッドなど、その名の通り木の香りをメインに据えた香水をウッディ系と分類します。
フローラル系やフルーツ系とはまた違った木特有の穏やかな甘みが鼻を喜ばせてくれます。
男性がつけると落ち着いた印象に、女性がつけるとクールな印象を表現することができます。
▼ウッディ系の香水
エルモノデラティンタ(フエギア)、アミリス・オム(メゾン・フランシス・クルジャン)
オリエンタル系:スパイシーで異国風の香り
バニラやミルラ、カルダモンやシナモンといったスパイスを用い、中東やインドをイメージした香りの系統をオリエンタル系と分類します。
異国情緒あふれると表現されることが多く、香りも一段と刺激的なものが多いです。
日本人の鼻には少し癖のある香りと映ることもあり、オリエンタル系の香りが好きな方は、お鼻が海外向きなのかもしれません。
冒険のし甲斐があると思います。
▼オリエンタル系の香水
アンバーエクストリーム(ラルチザン・パフューム)、シャリマー(ゲラン)
グリーン系:葉っぱをイメージさせる爽やかな香り
いわゆるフルーツ系やスイーツ系の甘い香りが苦手な方でも、グリーン系の香りならしんどくないということも多いです。
寝香水として、お休みのタイミングでつけるのもリラックスして入眠できるのでおすすめです。
▼グリーン系の香水
プルーム・アクア・ディ・フィオーリ(グッチ)、ナイルの庭(エルメス)
グルマン系:お菓子をイメージさせる甘い香り
お菓子の香りをイメージして調香された香りをグルマン系と分類します。
グルマンとはフランス語で食いしん坊(gourmand)を意味する言葉で、香りも非常に美味しそうなスイーツの香りがするのが特徴です。
お砂糖の香りやバニラ系のもったりとした甘み、アーモンドやココナッツの香りがお好きな方には特におすすめです。
重ための香りが多く、湿度が高く香りが飛びづらい日本では冬に活躍してくれる系統と言えます。
ブリット・フォーハー(バーバリー)、ゴージャス・ガーデニア(グッチ)
シプレ系:コティ社の香水に由来する香り
1917年にフランスの香水会社Coty(コティ)が発売したCypre(シプレ)というヒット香水にちなんだ香りの系統です。
これは自然界に存在する香りではなく、香水業界の発展に伴って誕生した香りの系統です。
そのためシプレ系と言葉だけ言われても香りのイメージがしづらいものとなっています。
シプレの名前の由来は地中海のキプロス島のフランス語読みで、当香水はキプロス島を産地とする植物を使用した香りだったと言われています。(現在は廃盤)
柑橘系、オークモス(苔)、パチュリなどをメインに据えた香りで、現在はこちらを型に様々な派生形が生まれています。
▼シプレ系の香水
ミツコ(ゲラン)
フゼア系:ウビガン社の香水に由来する香り
フゼアも香水業界の発展に伴って誕生した香りの系統で、世界最古とも言われる香水ブランド「Houbigant(ウビガン)」のヒット香水「フジェール・ロワイヤル」の構成をなぞった香りの系統のことを指します。
フゼアの名前の由来は植物の「羊歯(シダ)」のフランス語Fougere(フゼア)に由来していますが、シダを使用しているわけではありません。
19世紀当時のフランス宮廷や上流階級で人気だった観賞用のシダをモチーフにした香りだと言われています。
前出のシプレ系は女性向けが多く、フゼア系は男性向けの香りが多くなっています。
▼フゼア系の香水
サルトリアル(ペンハリガン)、エゴイスト・プラチナム(シャネル)
店頭で香りを試し、好みの香りを探そう
ざっくりと香水の種類を解説してきましたが、大きく分類しただけでもこれだけの種類があります。
その中から短時間で自分に合った香りやプレゼント用の香水を選ぶのは大変難しいものだと考えています。
普段香水の販売をしている私も、自分で購入する際はたくさん香りを試したうえで後悔のない香水選びをしています。
香水選びは時間のかかるものだと思って大丈夫です。店頭で香りを何種類も試すことは全く図々しいことではありません。
ぜひ気軽にお店に足を運んでみてくださいね。